むせ返るような成功者のにおい

とある人がSlackでおすすめ本だと書いていたから『エッセンシャル思考』というタイトルの本を読んだ.所謂ビジネス本を読むのは久しぶり.

さて,そのエッセンシャル思考というものは,結局のところ,リソースの有限性と自身にとっての長期的な利益が最良となるような最優先のものごとに集中しろ,というものだった. 自明では?としか思えない内容ではありつつも,たぶんこれが流行った背景があるのだろう.マルチタスク信仰みたいなものが,当時にはあったのかも知れない.

若干,Popsci的な本かと思って新しいことを知れると期待していた面もあったけど,見事に裏切られた.一応,学術論文やそうした記事を引いている箇所もあるが,それが話題の中心にあるわけではない. 偉人や名著からの引用,アネクドート的な成功者・失敗者エピソードその1,ただそういう記述があるというだけの研究の引用,アネクドート的な成功者・失敗者エピソードその2,エッセンシャル思考とそうでないものの例示,あってもなくてもいいような図,というような反復が20章分ぐらい続く.

まぁ,睡眠が大事であることがわかった,とか,集中できる時間とタスクの数は限られている,とか,価値判断に関係なく成り立つことも多く書かれているので,そういうことすら知らない人たちに届くのは良いと思った.

ただ,「A(人物もしくは企業)はXという点でエッセンシャル思考を体現している」というふうな定義の付け加えをひたすらに続けていくスタイルは,まさにビジネス本の嫌なところを体現しているので,全体として全く響かなかった.

この前は(そういうくくりに入れられるのは嫌だろうが)『反脆弱性』というこれも翻訳モノのやつを読んだが,何というか同じようなことをくどくどと書いていて,結構辛かった記憶がある.